しゅみがぼっちでぼっちがしゅみで

「趣味=ぼっちでもできること」といっても過言ではない。完全なぼっちになりきれない、ややぼっちな僕がだいたいお一人様でできる趣味や出来事について書いていくブログ。そして、見てくれた人のお役に立てたらいいのになぁ。と、ひっそりと野望を添えて綴るブログ。

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映画「ある男」を視聴したので備忘録を残すおはなし

映画「ある男」をネットフリックスで視聴したので、備忘録を残しておく。

芥川賞作家、平野啓一郎先生の同名小説を「蜜蜂と遠雷」、「Arc アーク」などの石川慶さんが監督編集を務め映画化。

movies.shochiku.co.jp

原作はこちら↓

冒頭の絵が印象的だったルネ・マグリットの絵、タイトルを『複製禁止』と言うそうだ。

僕は初めて絵を見たが、印象としては不気味な印象を受けた。

というのも、鏡の方を向いているのに、鏡側はこちらを向いていない、物理法則を無視した感じや絵のタッチなんかも無機質で暗い印象を受けた。しかし、何故か魅入ってしまうような不思議な感覚がした。

いったい誰なんだ?って感じで顔が見てみたいとも思った。

あらすじ

里枝は離婚後、幼い息子を連れて故郷に戻り、実家の文具店でたまたま知り合った谷口大祐と再婚。幸せな家庭を築いていこうかとした矢先、大祐は仕事中の事故で他界してしまう。

大祐の葬儀に兄・恭一が現れ、遺影の人物が弟の谷口大祐とは別人だと発覚。

里枝は弁護士の城戸に調査を依頼。谷口大祐と名乗り、亡くなった人物をXと名付け調査を開始。城戸は様々な人物と出会い、Xの調査を進める。

調査の結果、Xは原誠という名前で、過去に父親が罪を犯していたことが判明。

なぜ谷口大祐を名乗っていたかは、「戸籍交換」を行って谷口大祐を名乗っていた。

Xは何者なのか、谷口大祐はどこにいるのか。登場人物の背景にも注目の作品。

予告編はこんな感じ。


www.youtube.com

人物相関図

引用:映画『ある男』公式サイト | 11月18日(金)全国ロードショー

https://movies.shochiku.co.jp/a-man/

原作小説との違い

映画は、原作小説を忠実に再現していますが、いくつかの点で変更されています。

映画では、理恵の話として始まり、城戸の視点に焦点を当ててストーリーが展開されるのに対し、小説では城戸の話として始まり、里枝の視点に焦点を当ててストーリーが展開される。

ぜひ小説も読んで、楽しんでもらいたい。

感想

戸籍交換について、戸籍交換したい者同士がするってことで、どうしてもどこか欠点やコンプレックスがある者同士が戸籍交換するのだと思う。

今回のケースでは、原誠は殺人犯の息子として、谷口大祐は深く描かれていないが、老舗温泉宿の家系に見切りをつけての戸籍交換だった。

場当たり的に自分の名前やレッテルから逃れたい。どこか、途中で出てくる過労死自殺の話と似ている気がする。

義父「過労死ってのは自殺なんだよね?自殺でも慰謝料出るんだ?そんなに仕事がキツイなら逃げりゃいいだけの話じゃない。」

城戸「そういった正常な判断ができなくなるほど、追い詰められていたんだと思います。」

この会話がラストシーンで頭をよぎった。

大祐(X)の事故シーンについて

仕事中の事故で無くなってしまうのだが、大木の倒れる方向に斧を置いてしまっていて、取りに行った際に足を取られて転んでしまい、そこに木が倒れてきて・・・。

仕事の慣れとか安全確認不足もあるんでしょうが、あの動作が通常なのか気になった。

妻夫木の義両親、谷口大祐の兄が悪くて良い

城戸の過労死自殺の案件について、自殺なんでしょ?慰謝料でるんだ?とか在日とか政治についてお酒を飲みながら、愚痴を言うシーンがあるんやけど、あーいるいる!こんな人!って感じに自然。そして、自然に失礼なのが良かった。

このシーンで城戸が在日三世ということが分かる。義母のフォローもフォローになってないし。もう、笑うしかない感じの城戸。

大祐の兄についても、城戸と話が合わなくても気にせずグイグイ進む感じ、自身の温泉とか家系のことしか頭になくて、天然で不快に思わせる感じ、最高に良かった。

小見浦の台詞が良かった

城戸と小見浦の面会シーンにて、一発で城戸が在日だと分かったのもすごいし、詐欺師ならではの口調も恐ろしかった。

「先生(城戸)は、在日っぽくない在日ですねぇ、それはつまり在日っぽいってことなんですよぉ。私ら詐欺師と一緒で」

城戸が心のどこかで、詐欺師である小見浦を差別しているのと同時に、城戸も在日にコンプレックスがあり隠したいと思っていることを小見浦に見透かされていると感じたシーンやった。

「私が小見浦憲男っちゅう男やて、どうしてわかるんです?私そんなに小見浦憲男っぽい顔してますか?刺青の彫師かて、人に彫る前にまず自分に彫るでしょ?私だけどうして戸籍を変えてないと思うんですか?アホやなぁ」

城戸と一緒にアホになって観ていました。また、「小見浦憲男っぽい顔してますか?」って台詞で人間は"顔"で判断すると思った。表情、顔つき、肌の色。ただ、顔からは犯罪者の子とか、名前までは判断できないけど。

だから、顔が見えないルネ・マグリットの絵に対して何か不気味な印象を受けたのだと思う。顔が分からないから怖いのだと思う。

また、関西弁が良かった。すこし引っ掛かる関西弁で、もしかして戸籍交換で得た小見浦が関西出身だったから無理やり関西弁を・・・?なんて思ったり。真偽は不明ですが。

窪田正孝さんの父子の演技が良かった

窪田正孝さんの陰のある谷口大祐時代の演技、父のことを正面から背負った原誠時代の演技、犯罪を犯す小林謙吉の時の演技が演じ分けられていてすげぇ。と思った。

鏡をみて父を思い出すなら整形でもしてしまえ!とか思ったり。

ただ、谷口大祐さんとして暮らしていた時の窪田正孝さんが幸せそうな顔で良かった。と思う。

ラストシーンについて

小説では中盤にあるこのシーン。観客にその後を投げかけるシーンで、このシーンを撮りたいがための物語だったと思う。

妻のスマホへのライン通知を偶然にも見てしまって、不倫疑惑を抱いた城戸。

バーで知り合った男と身の上話をしているが、話の内容は城戸本人のことではなく、今まで身辺調査をして得た林業の話や伊香保温泉の話をしていて、谷口大祐とXについてを自分のことのように話している。

その後の「僕は・・・」で終わるのも秀逸だった。

ここで、話題になるのが「僕は・・・」のあとの台詞だと思う。

僕は谷口大祐を名乗ったと思うんだけれど、戸籍交換してんじゃねぇだろうな?とさえ思ってしまった。

その理由を書く。

・城戸の自宅のシーンで「気がまぎれるんだよ、他人の人生追いかけてると」「現実逃避かな」と言っていたのは、自分も誰かになれるんじゃないだろうかと思ったこと、自分の背景を上書きしたいと思った。コンプレックスから逃げたいと思ったのではないかと思う。

・小見浦という男を知っており、戸籍交換する方法を知ってしまっている。

・「そういった正常な判断ができなくなるほど追い詰められていたんだと思います。」と発言していることから、追い詰められたら正常な判断が出来なくなる心境に理解がある。

・妻の浮気疑惑。戸籍交換をしていない城戸よりも、身分を偽って結婚生活をしていた里枝とXは互いに尊重し幸せそうだった。

正常な判断からすると、弁護士で妻子持ちで義理両親はお金持ち。こんな人生は手放したくないはずなんだが、嘘の人生を語っているのに「この人生はもう手放したくないですねぇ」と言っている。

やってないよな?嘘ついて現実逃避しているだけだよな?城戸(笑)